ソウルのミュージカル・演劇を楽しむ(6)ミュージカル"笑う男"

2018年10月4日のソウル訪問時のミュージカル鑑賞の紹介です。
今回は、ミュージカル”笑う男”です。製作費175億ウォン、製作期間5年を費やしたと言う、話題の大規模ミュージカルです。

原作者は"レ・ミゼラブル"、"ノートルダム・ド・パリ"の作者で有名なフランスの文豪、ヴィクトル・ユーゴー。彼はこの小説"笑う男"に対し、"これより優れた小説を書いた事がない"と言ったほどの高い評価を与えたと言われています。

脚本、演出家のロバート・ヨハンソンが飛行機の中で観た映画"笑う男"に感動し、これをミュージカルにしたいとEMKミュージカルカンパニーのオム・ホンヒョン代表に話を持ち込み、製作が決まったとの事です。
"ミュージカル笑う男"は、EMKが初めて手がけた2016年初演の創作ミュージカル"マタハリ"よりも前から構想が練られていた作品であり、オム代表は、"マタハリ"以上に世界を狙える作品だと評価しているようです。

本作品は、2018年7月8日に開演し、同年11月4日に終演を迎えました。開演からわずか1カ月で観客動員数10万人を達成、最終公演までに24万人の観客動員数を記録、輝かしい記録を達成したと言われています。
また、同年11月5日に開催された、第7回イエグリーンミュージカルアワード(韓国のミュージカル賞)で、最多6部門7つの賞を獲得、本年度の最高のミュージカルであることを実証しました。
また、早くも日本でのライセンス公演が東宝主催で予定されています。ミュージカル”笑う男 The Eternal Love – 永遠の愛”と言う題名で2019年4月9日より4月29日まで東京有楽町の日生劇場で上演されるようです。

この作品は、中世の英国が舞台になるのであるが、当時の1%にも満たないのではないかと言われる富者の貴族階級と貧者の庶民たちとの圧倒的な貧富の差、身分格差の矛盾を鋭く突き、人間の尊厳とは何なのかを深く考えさせてくれる作品です。

日本語版の”笑う男 The Eternal Love – 永遠の愛” を観られる方もおられると思いますので、ネタバレにならないようにパンフレットから軽くあらすじを引用しておきます。

あらすじ

富者の天国は貧者の地獄である

17世紀のイギリス、子供たちを拉致して奇形的な怪物に作りあげ、見世物にして貴族たちに売っていた人身売買団、コンプラチコス。そのコンプラチコスにより奇異に引き裂かれた口を持つようになった幼いグウィンプレンは、激しい吹雪の中に一人で捨て去られる。身を切るような寒さの中を彷徨っていたグウィンプレンは凍死した女性に抱かれている赤ん坊を見つけ、星という意味で「デア」と名付ける。その後、行商人ウルシュスに偶然出会ったグウィンプレンは助けを求める。普段ウルシュスは人間を嫌悪する人物だが、口の両端を切り開かれてしまった少年と失明している赤ん坊を引き取ろうと心を決める。

15年後、成長した二人の子供はウルシュスと一緒に流浪劇団を立ち上げていた。グウィンプレンの奇形的な笑顔と盲人であるデアのラブストーリーを語る演劇は大人気を得る。その演劇を見たアン女王の異母妹のレディー・ジョージアナはグウィンプレンに魅了される。ジョージアナから誘惑されたグウィンプレンは、魅力的で美しい貴族女性である彼女に心が揺さぶられる。一方、ウルシュスとデアはそんなグウィンプレンの態度に胸を痛める。ある日、「涙の城」として知られた悪名高い監獄に連れて行かれたグウィンプレンは、そこで自分の出生の秘密を知らされる。三人の人生にはまた大きな変化と危機が迫る。

登場人物

グウィンプレン
奇異に引き裂かれた口、奇形な顔をしているが官能的な若者。消すことのできない永遠の微笑の影に、普通の人々と全く変わらない、夢を見る心がある。

ウルシュス
熊のような風采の放浪の薬売り。興行師。人間を嫌悪している厭世主義者であり哲学者。

デア
真っ白で繊細な心を持つ天使のような存在。瞳には光がみなぎっているが、盲目のため見ることができない。瞳ではなく心でグウィンプレンを見、心の傷を抱き包む。

ジョシアナ公爵夫人
自身の内面が怪物と同じだと感じており、世の中の全てのことにあきあきしている。グウィンプレンを通して人生の幸福に対し思い悩む。

デヴィット・ディリー・ムーア卿
故クランチャーリー公爵の私生児。ジョシアナとの結婚を通じて身分の上昇を夢見る野心家。偽名を使って密かに平民の暮らしを楽しむ。

フェドロー
嫉妬と理由のない憎悪にあふれている。金と権力に対する欲望がみなぎっている狡猾な下僕。

アン女王
逝去したジェームス国王の娘であり、大英帝国の統治者。食い意地が張り、無知で、自信の不器量な容貌に苦しんでいる利己的な人物。すべてのものを兼ね備えてるジョシアナに対して嫉妬している。

(公式パンフレットより引用)

上映時間は180分の大作です。

会場は韓国でも最大規模を誇る公演場、ブルースクエア・インターパークホール。今回の作品には製作費175億ウォンが投じられたと言う事ですが、インターパークは主なスポンサーの一つだそうです。
会場には地下鉄6号線のハンガンジン(漢江鎮)駅の2番出口と3番出口の間にある地下連絡通路を通ると地上に出ずに到着できます。

ハンガンジン(漢江鎮)は、米軍基地があることによって異国的な情緒を醸し出しているイテウォン(梨泰院)の一つ隣の駅で、おしゃれなカフェやレストラン、ブティックが多く並び、最近、ソウルでもおしゃれなエリアとして注目されています。
何年か前にここでミュージカルを見た後、韓国創作料理の有名なレストランで食事をしたことを思い出します。(高かった~!!!)

前回のソウル訪問時、地下鉄の通路などで ”笑う男” のポスターを何度も見る機会があり、興味を持っていたので、今回の観劇は ”笑う男” に決定しました。
急遽、ソウル訪問を決めたため、慌てて予約をしようとしたのですが、チケットを購入しようとする日にちによって、残席が大きく違っていました。特に、パク・ヒョシン主演の公演が圧倒的な売れ行きでした。できれば人気のある公演を観たいと思い、良い席はありませんでしたが、パク・ヒョシン出演公演のチケットを予約しました。

私は今まで、出演者をあまり選ばず観劇していました。というより、韓国の役者個人の評判とか能力とかに詳しくはなかったのです。
今回、主役のグウィンプレンを演じる役者は3人でした。パク・ヒョシン、パク・ガンヒョンそしてスホのトリプルキャストです。
スホは、韓国で絶大な人気を誇る男性アイドルグループ EXO のリーダーで今回2度目のミュージカル挑戦です。
パク・ガンヒョンは、2015年デビュー後いくつかのミュージカルに出演し好評を博し、今回、抜擢された新人です。
パク・ヒョシンは、数々のミュージカルに出演し、現在までにミュージカル俳優としてすでに確固たる地位を築いており、多くのファンを持っています。
後から分かったことですが、第7回イエグリーンミュージカルアワードでは、パク・ヒョシンは男優主演賞、パク・ガンヒョンは男優新人賞、スホは人気賞とそれぞれ受賞しています。

あらずじも上に書いた程度の知識しか無かったため、大まかなストーリーの展開しかわからず、後でネットで調べて、”あ~ そういう事だったのか”と納得した程度の理解しかできませんでした。しかし、パク・ヒョシンの圧倒的な歌声はそれを補って余りあるものでした。全身の毛が逆立つというのですか、鳥肌が立つというのですか、感動の嵐です。かつて観た、ミュージカル レベッカ に出演したミュージカル女優リサの歌声を聞いて以来でした。他の役者さんたちもパク・ヒョシンに引っ張られ、どんどんとテンションが上がっていきます。あたかも、歌声で対決しているかのように、各役者さんたちの持っている能力が限界一杯まで振りしぼられているような凄い舞台でした。舞台装置、舞台衣装も素晴らしく、韓国語が理解できなくても楽しめる、超おすすめのミュージカルです。再演が決まれば、ぜひ、もう一度観たい舞台でした。

もし、再演が決まって、韓国版 ”笑う男” を観に行かれる方がおられましたら、ネタバレ覚悟のあらすじを紹介しているブログがありましたので、ご紹介しておきます。
日本語版 ”笑う男” を観に行かれる方は自己責任でどうぞ。(笑)

今回のソウル訪問のアップ記事
(1)ソウル訪問 LCC(3)ティーウェイ航空
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