ソウルのミュージカル・演劇を楽しむ(5)ミュージカル"パルレ"

2018年7月25日からのソウル訪問時のミュージカル鑑賞、第2弾、"パルレ"の紹介です。

いよいよ、真打ちの登場です。
今回、このミュージカル"パルレ"の鑑賞は私にとって3回目になります。
私が、成均館大学の語学堂に留学していた頃でした。当時、地下鉄を利用して通学してたのですが、学校への下車駅である地下鉄4号線のヘファ駅の地下通路には演劇やミュージカルのポスターが所狭しと貼り付けられていました。
ここヘファ駅は、韓国演劇、ミュージカルの聖地と言われているテハンノ(大学路)への下車駅でもあります。そのため、夕方になると当日割りの格安チケットを売りさばくチケット売りとそれを求める観客でにぎわってきます。
当時、ほとんど演劇に興味を持っていなかった私ですが、毎日見るポスターやチケット売りの声かけに次第に興味をそそられていきました。

ある日、意を決して、ヘファ駅の4番出口近くのソウル演劇センターで面白そうな演劇はないのかとたずねてみました。もう4年前になります。その当時ソウル演劇センターでは主にテハンノで上演されている演劇の何十種類のパンフレットが置いてあり、係の人に聞くと演劇の紹介もしてくれました。韓国語か英語しか通じませんでしたが、いやな顔一つしないで懇切丁寧に紹介して頂きました。現在では、チケットの販売はしていませんが、当時は当日割の格安チケットなども購入可能でした。その時、紹介してくれたのがこのミュージカル"パルレ"だったのです。
私の韓国語があまりにもひどかったのでしょう、何も聞いてないのに、この"パルレ"には日本語の字幕がついていると言うのです。(笑)
当日割りの安さにもひかれ、何の先入観ももたず、購入、鑑賞しました。
初めての演劇、小規模ミュージカルでした。
役者の唾がかかるほどの近さ、韓国演劇恒例の客いじりの楽しさ、素晴らしい楽曲と歌声、笑いと涙と感動の物語。韓国演劇のエッセンスが全て込められた素晴らしい公演でした。
私に韓国演劇、ミュージカルの楽しみを教えてくれた、忘れることのできないミュージカルです。

ミュージカル"パルレ"は、2005年に初演され、その年に第11回韓国ミュージカル大賞作詞・脚本賞を受賞。また、2012年の韓国の高校、中学の国語教科書に採用され、その芸術性のたかさを評価される。初演から現在まで13年間にわたり上演され続け、その間、日本、中国でライセンス公演が持たれる。日本でも何度も日本語の公演が持たれており、記憶に残っている方もおられるのではないでしょうか。2010年10月には2000回公演、観客動員32万名を達成。"パルレ"は現在オープンラン(無期限ロングラン)公演を実施、公演記録を更新中で、今回の公演は 4412回目の公演だそうです。
(日下隆博著 "ミュージカル「パルレ」を歌って日常韓国語を学ぼう" 晩聲社発行 より引用)

このミュージカルには、週末の金曜日限定ですが、日本語字幕が舞台の両サイドに設置されます。しかし、字幕が設置されるかどうかは、"ケンチャナヨ!"の韓国のことなので確認をしていただいた方が良いのではないかと思います。私が観に行ったのは全て金曜日だったんですが、私の場合、全て字幕は付いてました。(笑)
韓国語を理解できない人たちにとって、字幕は大きな味方になります。しかし、舞台は生きており、役者と観客のかもし出す雰囲気によってどんどん変化していく時があります。ここに生の舞台の面白さが凝縮され、舞台との一体感を感じます。私たちが同じ公演に何度も足を運ぶ理由のひとつになっているようです。
しかし、字幕を読むことにとらわれ、舞台の雰囲気に浸ることができなかったとしたら本末転倒ではないかとも思います。私もついつい字幕を読むことに神経をとられ、舞台の雰囲気に置いていかれることが多々ありました。こう考えると、字幕があるのも良し悪しだと思うところです。

今回の公演でのモンゴル人の主役ソロンゴを演じたのは日本人の野島直人さんでした。

野島直人さんは、劇団四季に入団され、数多くの舞台に出演し高い評価を受けました。退団後、様々な映画祭で主演した短編映画がグランプリを取り、海外でも高い評価を受けています。2011年帝国劇場開場100周年記念公演、「レ・ミゼラブル」ではマリウス役に抜擢され、2013年と2015年にはアンジョルラス役にて出演されています。(ウィキペディアより抜粋)

彼は、2012年の"パルレ"の日本ライセンス公演時に日本語版の"パルレ"のソロンゴ役を演じて好評を博し、その後、本家、ソウルのテハンノでの定期公演で韓国語での主人公、ソロンゴ役に出演されました。
主人公ソロンゴはモンゴル人なので、韓国語に訛りがある方が自然であり、彼の韓国語が役にぴったりとあったのかも知れません。私が聞いているぶんには完璧な韓国語だとしか聞こえなかったのですが、ネイティブの韓国人からすると、その微妙な違いが聞き取れるのかもしれません。
また、それ以上に、彼の魅力的なルックス、歌唱力、演技力が"パルレ"のなかで遺憾なく発揮され、”パルレ"の魅力をさらに高めたようです。
彼が出演した公演は全て満席となったようで、日本人、野島直人が韓国の観客に最大限の好意を持って受け入れられたと言っても過言でないでしょう。
今回の公演は、彼の素晴らしい歌声と演技が見事に際立った素晴らしい舞台でした。
公演終了後、観客の見送りに出て来た野島直人さんに、"素晴らしかったです”と声をかけたのですが、"久しぶりに日本語を聞いた"と、とても喜んでいただきました。皆さんも彼をお見かけしたら、声をかけてあげれば喜ばれるのではないかと思います。

ミュージカル"パルレ"の紹介です。
江原道から夢と希望をもってソウルに出てきたのだが、冷たい現実に打ちひしがれる女主人公ナヨン。モンゴルから家族のためソウルに出稼ぎに来たのであるが、外国人に対する差別と搾取にさいなまれる男主人公ソロンゴ。この二人の出会いと愛をはぐくむストーリーを中心に、ソウルの貧民街の長屋で必死に生きる様々な人々の下町の人情と人生模様を混じえて繰り広げられる作品です。
あがいてもあがいても浮かび上がれない人生にもかかわらず、どうしようもない理不尽な出来事や度重なる不幸を笑い飛ばして、ひたむきに明日への希望を持ち続け、明るく生きる人々の強さを描いた作品であり、現代の韓国が直面している様々な社会問題を鋭くえぐった作品でもあります。

劇場は、ヘファ駅から約5分ほどの距離にあります。敷地の一角にチケットブースがあり、そこで座席指定券を受け取ることができます。今回はコネストから予約したのですが、予約確定のメールを見せると座席指定された入場券を頂くことが出来ました。
劇場は5階にあり、エレベーター等は無く、建物の外階段を歩いて登らなければなりません。
入場は開場の15分前で、早く到着しても建物内の待機スペースはほとんど無く、外で待つようになります。暑さ寒さが厳しい時には待機時間がかなり辛くなりますので、あまり早く到着してもどうかと思います。
チケットの半券は、途中休憩時の再入場の時にチェックされますので捨てないようにしてください。
客席は200余りで、テハンノでは大きい規模に属すようです。
後半の舞台が始まる前に、舞台上でサイン会があり、先着20名までサインと写真撮影をしてもらえます。このことを知っているお客様が我先にと舞台に駆け上がります。興味のある方はぜひチャレンジされてみてはいかがでしょうか⁉︎
20時から始まったのですが、途中15分の休憩をはさんで終わったのが22時45分ぐらいでした。第一幕 80分、休憩 15分、第二幕 65分、全体で160分と言うのが公式時間配分です。かなり長時間の公演ですが、あっという間に終わったというのが私の感想でした。
”パルレ”のCDを何度も聞いていたので、頭の中で好きな曲がリフレーンして、何とも言えない感動に包まれながら帰ったのを覚えています。

最後に"パルレ"の曲の中で私の一番好きな歌詞を記しておきます。

洗濯物が風に身を任せるように
人生も風に任せるのよ
時間が流れ流れて 洗濯物が乾くように
悲しいあんたの涙も乾くわよ
さあ元気出して

悲しみも悔しさも
いっしょに溶かして洗っちゃうのよ
手で揉んで 足で踏めば 力が湧くでしょ
きれいになって よく乾いて
気持ちのいい自分をはおって
言いたいことをもう一度言うのよ

(日下隆博著 "ミュージカル「パルレ」を歌って日常韓国語を学ぼう" 晩聲社発行 より引用)

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