2019年2月14日から3泊4日で、今シーズン3回目の白馬コルチナスキー場に行って来ました。
今回は、試験が終わった末娘を連れて行き、また、15日から息子夫婦が遅れて参加する事で、総勢、5名のスキー行です。
前日まで、3日連続の降雪で、30cm以上降ったようです。コースコンディションは良好でした。
ここ、白馬コルチナスキー場は、新雪が降らないと、非圧雪バーンはすぐにコースが荒れてしまいます。斜度も急なため、一度コースが荒れてしまうと、私程度の腕前では歯が立たなくなります。また、圧雪バーンのロングコースが少ないため、雪が少ない時は、私にとって面白いスキー場とはちょっと言い難くなります。今シーズン3回目になりますが、幸いにして、3回とも全て大量の降雪があり、コースコンディションはかなり良好でした。ラッキーとしか言いようがないのかなと思っています。先シーズンは1月にもかかわらず、雨にたたられたことを考えると僥倖だとも思えるのではないかと・・・(笑笑笑)
もう、コルチナには初めて来てから4回目になります。スキー場の様子もわかって来た事だし、そろそろ、林間とかバックカントリーとかの人が踏んでないパウダーが気になって来ます。
クラブメッドのサホロとかトマムとかで林間はかなり経験しています。それどころか、ほぼ30年以上前から、カナダのヘリスキー会社、CMHで何度も本物の(?)パウダーランを経験しました。しかし、それらは全てガイド付きでした。
今まで、コルチナのオフピステにずっと気後れしていました。なぜかと言えば、コルチナのバックカントリーや林間等はオウンリスク、何が起こっても責任を他人に転嫁できない自己責任の世界だからです。管理されたスキー場のなかを滑るのではなく、冬山登山でのスキー滑降なのです。それも、どこに降りてくるのかとか、地形や斜面の状況はどうなのかとかの情報も全くありません。すぐ横にスキー場があると言っても、コース外は、安全に管理されたゲレンデではなく冬山のあらゆる危険性がひそんでいます。私は、雪崩を含む冬山でのあらゆる危険性を的確に予測できるだけの能力を持ち合わせていません。自分自身がその事を一番よく知っています。コルチナのオフピステでのスキーに対し,恐れに似たためらいが生じていたのも当然の事だと思います。
しかし、人の踏んでない、ノートラックのパウダーはやはり魅力的です。どこか、迷いようのない安全そうに見えるコースはないかと探してみたところ、良さそうな尾根筋がありました。
稗田山コース3の上部から第1リフトの終点へ続く狭い尾根筋です。
ここは、反対側の尾根筋の第3クワッドの上部からよく見えます。林もなく快適に滑れそうでした。
今回、恐る恐るですがチャレンジしてみました。
雪も深く、斜度もあまりきつくなく、いい感じです。しかし、かなり狭さを感じます。尾根の右端の方は下が見えません。どうやら雪庇になっているようです。突き抜けると何処まで落ちるかと考えると近寄りたくもありません。
少し行くと、穴が開いてるみたいに大きくへこんだ段差がありました。近くに行くまで気がつかず、スピードがついてると止まり切れずに頭から落下しそうでした。
そこをやりすごして下っていったのですが、尾根筋は硬い雪と柔らかく深い雪が混在しています。かなり滑りにくい状況です。
幅も狭かったので、結局、第6ペアリフト横のわらび平ゲレンデの方へ迂回したのですが、急激に落ち込むところが何箇所もあり、四苦八苦しながら降りて来たというところです。
パウダーの爽快感を味わうどころか、何度も冷や汗をかいて降りて来たというのが実情でした。しかし、このコースを大きな声で歓声をあげながら降りてくるボーダーのグループもいましたので、ただ単に私の実力不足なのかも知れません。
自己責任でのオフピステのスキー滑走は今回が初めてでした。今回は、不慣れな地域でのオフピステの危険性を再確認することができ、非常に良い経験になりました。
初めてカナダのヘリスキー会社、CMHに行ったのは約30年前の5月の連休でした。いかにカナダとはいえ、5月となればスノーコンディションは最悪です。でも、高度を上げればまだまだ真冬です。カナディアンロッキーのてっぺんをヘリで縦横無尽に運び上げてくれます。てっぺんに行けば、まだまだ深雪はいっぱい残っています。
360度の最高に素晴らしい景色を眺めながら、深雪三昧です。深雪に慣れてない私は、深雪を楽しむどころか、七転八倒です。しかし、3日もすれば深雪にも慣れ!口笛が出るように楽しめるようになります。こうやってパウダーにはまり込み、いつしか、CMHのヘリの爆音が耳について離れなくなり、寝ても覚めてもパウダーを思う、立派なパウダージャンキーが出来上がります。
当時、まだ、ファットスキーもなく、ロシニョールの新雪用のスキーは、2m以上の細長いキーでした。幅を広くするのではなく、長くすることによって浮力を得ようとするものでした。
深雪滑降の経験がなかった私は、スキーを浮かすことができず、何度も何度も前方に頭から転倒しました。そして無理にスキーを浮かすため、後傾になり、太ももが筋肉痛でパンパンになったことを思い出します。
今のファットスキーは、片足だけでも充分、体重を支えてスキーを浮かせてくれます。また、ロッカーと言うカービングにも匹敵するのではないかと言われる画期的なシステムをファットスキーに併設する事によって、深雪を自由自在に楽しむことが出来るようになりました。
用具の進歩によって、今までは一部のエキスパートにしか楽しめなかったオフピステを簡単に楽しめるようになったのです。
しかし、バックカントリーと呼ばれるオフピステの危険性は今も昔も変わりません。バックカントリーは、安全に管理されたスキー場の中ではなく、全て自己責任のどんなことでも起こりうる危険性に満ちた冬山登山の世界なのです。
当時のCMHのヘリスキーでも、毎年、何人もの死者が出ていたと聞いた記憶があります。雪崩に巻き込まれたり、ツリーウェルと呼ばれる大木の裏の雪面にできた大きな井戸のような穴に頭から突っ込んだりして運悪く死亡するといったケースがあったようです。ひざ痛のため、もう10年以上CMHに行っておらず、最近の状況を把握できていませんので気になる方はご自分でお調べになることをお勧めします。
CMHのガイドは常に自分より下で止まるなと言い続けていました。ガイドが止まるのはチームを集めたり、休憩のためばかりではなく、前下方に危険を察知し、チームを安全に停止させなければならない時があるからです。したがって、常にガイドよりも上で停止することを要求するのです。
また、見通しの悪い林間を滑る時、スキーヤー2名でバディを組ませます。一人が滑って停止したのを確認して、次のスキーヤーがバディを追い越して、バディから見えるところで停止します。これを繰り返すのです。何かあったらバディが相手を手助けするシステムです。
国際的な山岳ガイドの資格を持つガイドが万全の安全を考慮しながら先導しても、事故は起きます。
当時のCMHでは、1つのロッジの定員は40名です。その顧客を1チーム10名で4チームに分けます。各チームにガイドを付け、ガイドが先導します。チームの最後尾にパックマンと名付けられた顧客が、無線とシャベルやゾンデの雪崩救助グッズの入ったザックを背負います。そして、ガイドを先頭に、1列になって滑り降りていきます。もし、雪崩に巻き込まれても、全員がやられることはありません。前部か真ん中か後部のどちらかが巻き込まれることになります。
もちろん雪崩に巻き込まれた時のためのビーコンは全員が所持しています。
幸いに雪崩に巻き込まれなかった者がすぐに捜索を開始します。また、同時にガイドまたはパックマンが無線で救助を求めます。
ヘリスキーエリアは隣り合って何個もあり、ヘリで来るとひとっ飛びです。
雪崩発生から10分も経たないうちに、大救助網が出来上がります。
雪崩からの救助は時間が勝負です。雪崩を避けることが一番ですが、避けられなかった時にいかに素早く救助するのかということが一番大切だと思います。
このような大規模な救助体制を引いていたとしても、死亡遭難事故を完全に防ぐことはできません。
ましてや、1人で裏コルチナのようなバックカントリーに入るのは無謀としか言いようのない行為だと思います。例え、万全の装備を携えていたとしても、その危険性は明らかだと思います。
今回、スキーを終えてホテルの部屋でテレビを見ていたのですが、見たことのあるスキー場が映っていました。ここ、白馬コルチナです。スキー場エリア外で遭難死亡事故があったようでした。
2019年2月14日、コルチナのバックカントリーを楽しんでいた6人のノルウェー人グループの1人が帰って来ないと通報があり、スキーエリア外を捜索したところ、雪崩に巻き込まれた遭難者を発見したそうです。発見に至るまで何時間も経過しており、すでに心肺停止状態だったそうです。もちろん彼はビーコンなどの雪崩救助グッズを所持していたのですが、1人で滑っていたため、雪崩に巻き込まれた時、誰も近くにいなかったようです。捜索時ビーコンで容易に発見できたとのことなので、もし、誰か近くにいたとしたら助かっていた可能性があったのではないかと悔やまれます。
また、2017年12月27日、白馬コルチナスキー場で、東京都在住の41歳の女性スノーボーダーが宿に帰ってこず、29日にスキー場コース外で雪に埋もれて死亡しているのが発見されました。彼女はスノーシュー等も携帯しており、バックカントリーにはかなり慣れていた模様でした。しかし、単独でバックカントリーに入ったようで、これが遭難死亡事故の主原因だったと思われます。
バックカントリーを楽しもうと思えば、普通、スキーを担ぐかシールを付けるなどしてハイクアップしなくてはなりません。体力も時間も必要とします。
しかし、白馬コルチナスキー場では、リフト終点からハイクアップすることなくバックカントリーに入っていけます。林間も自己責任のもと、開放されており、容易にノートラックのパウダーを楽しむことができます。この点が、コルチナの最大の魅力であり、全世界のスキーヤーを魅了する理由だと思います。
しかし、先程述べたような遭難事故は容易に起こります。バックカントリーはスキー場ではなく、冬山登山の世界です。あらゆる事が起こり得ます。スキー場でのスキー、スノーボードの延長ではなく、過酷な冬山登山の世界だということを再度認識しなければならないのではないでしょうか?
自戒の念を込めて、このブログをアップしたいと思います。
遭難された方々のご冥福をお祈り致します。
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