約1年後、検査のため再び韓国にやって来た彼は、記者会見を開いた。彼は、韓国の最先端医療のおかげで、まともに歩けなかった変形性膝関節症の膝が完治したと報告し、記者団の前で走ってみせたのである。
私の最大の趣味はスキーである。
大学2回生の時、体育実習の出席日数が足りず、単位取得のため、信州野沢温泉でのスキー合宿に参加した。雪がめずらしい地方出身者の私は、純白の雪の世界とスキーというスポーツにすっかり魅入られてしまった。
年の暮れに初スキー、だんだん飽きてくる3月の半ば頃には雪も消え、やりたくとも出来ない。残りの9か月、だんだんとまたスキーをしたくなる。どこかの国道で、”積雪のためチェーン必要”の道路案内を見ると、とたんに舞い上がり、ひたすらスキーシーズンの到来を待ち望むようになる。最高にテンションの上がった状態でスキーを再開し、また、だんだんと熱意が冷めてくる頃に雪もなくなってくる。という循環で今日までスキーを愛してきたのである。
しかし、年齢とともに、酷使された私の右ひざは、軟骨がすり減り、スキーを長時間楽しむことが出来なくなってしまっていた。ひざは腫れあがり、力が入らなくなり、スキーを履くためのビンディングを踏むことすら出来なくなる。もちろん、ターンの中での加重も出来なくなり、スキーをコントロールする事が難しくなっていた。当時、究極のスキーと言われていた、カナダのヘリスキーにはまっていたのであるが、もちろん膝がもたず、ヘリスキーを諦めざるを得なかったことは断腸の思いであった。
その時、朝鮮日報の記事を見た。”これだ!!!”と一人叫んだのを覚えている。ラッキーなことに、前年に韓国へ7か月間語学留学をしており、韓国語もかなりわかるようになっていた。私はインターネットで韓国での幹細胞治療、軟骨再生手術についてとことん調べてみた。
近年、韓国の各種最先端医療技術の分野は、世界トップレベルの水準を維持、発展させている。
また、国家主導でメディカルツーリズムを推進しており、世界各国の富裕層が韓国の最先端医療を受けるため来韓している。そして、この韓国が誇る最先端医療技術の一つが、世界初の膝軟骨再生手術である。
この治療法は、メディカルポスト社の臍帯血由来幹細胞治療剤、カティステムを使用し、これまで不可能であった、膝軟骨を再生させるという治療法だ。
カティステムは、新生児のへその緒から抽出した臍帯血に含まれる、間葉系幹細胞( 骨や血管、心筋などの細胞への分化機能を持つ万能細胞の一種 )を抽出、培養して作られた製品であり、すでに、韓国の国家機関である食品医薬品安全庁から認可を受け、日本でも特許を取得していた。
まさに、人工関節を入れるほどでもないが、痛みのため、生活に不便を感じる程度の変形性膝関節症の患者にうってつけの治療法であった。
各病院から返事があったが、最終的にサムソンソウル病院に決定し、2015年5月29日、手術を受けてきたのである。
診察の結果、軟骨は80%程度再生しており、このぐらい再生していれば手術は成功と言えるとのことであった。しかし、やはり、不安である。痛みは、手術をした部位からでは無く、他の部位から来ていると言われたのであるが、半信半疑の状況である。もう少し時間をかけて経過を見ていきたいと思う。